営業 × 建築設計 × 設備設計 × 施工管理

被災した地元の希望をつくる、
水産物の加工専門工場を新設。

鮮冷「水産加工工場」新築設計施工プロジェクト
宮城県牡鹿郡女川町

ラックランドが相次いで手がけている東北の復興案件。その中心地とも言えるのが、宮城県の女川町だ。東日本大震災の津波被害で、町民の1割近くが命を奪われ、8割以上が住まいを失ったという女川町は、もともと世界三大漁場のひとつ。今回の「水産加工工場」も、地場産業の復活を期した重要物件だ。補助金申請という専門知識を駆使しながら、時間や予算と闘う日々の中で、「復興とは何か」「仕事とは何か」と向き合うラックランドの面々。その葛藤と手応えに迫る。

プロジェクトの流れ

<2013年 4月>アドバイザーとして参画

<2014年10月>設計施工受注

<2015年 5月>工事着工

<2016年 2月>工事竣工

物件規模

鉄骨コンクリート造2階建

延べ床面積6,348㎡

主要スペース:選別室、刺身室、加熱調理室、冷凍室

時間、人手、予算。補助金案件ならではの制約。
同時進行で次々に対応を続けた。

吉田

クライアントとなった鮮冷さんは、石森商店と岡清という、地元有力企業が手を取り合って立ち上げた、新しい企業でした。どちらも魚介類の加工を生業にしてきて、お互いに震災に見舞われた。「生かされた命を何に使うのか」ということが最大のテーマでした。当初、ラックランドは補助金申請のアドバイザーとして参画する立場でした。

下岡

社内では建築設計と設備設計、それと食品工場物件の経験者が集まってチームが結成されました。クライアントには熱意も志もありましたが、新設された会社でもあったため、業務内容も確定していなかった。「将来こんな拡張がありうる」という漠然とした要望も多々あって、プランを決めるのに時間がかかりましたね。

吉田

補助金としての上限があり、竣工にも期限があり、設計変更は着工の直前まで行いました。その間、アドバイザーだけでなく、工場の設計施工に関しても受注していたのですが、実際に工事を請け負うとなると、なかなか骨の折れる案件だったことは確かです。町全体が工事中と言っても過言ではないぐらいの復興真っ只中でしたので、職人の確保には苦労しました。

鹿島

大変でしたね(笑)。確認申請図が完成したのは着工の1ヶ月前。限られた時間の中で見積、実行予算、工程表の作成、鉄骨制作図の承認、業者との打ち合わせなど、膨大な量の業務をひとりでまとめなければなりませんでした。

下岡

私は設備設計ですので、通常は本社で図面を描いています。ただ、役所や消防署との折衝、現場のヒアリング、クライアントへの説明などで、定期的に現場にも足を運んでいました。遠い東北の地ですので、もちろん出張です。それが、途中から現場に常駐することになったわけです。人手不足です(笑)。設備関連の現場監督をするかたちになりました。レアケースですよね。

鹿島

当たり前ですが、この規模の案件をひとりで回すことは不可能です。特に時間的に制限のある物件でしたし。下岡が現場に留まってくれたことは助かりました。施工管理としても白石、常松が合流してきて、竣工まで突っ走ることができました。

白石

直前まで、同じ女川エリアで別の復興案件を担当していたのですが、そこから直接駆けつけたような感じですね。ピーク時には100人前後の職人が現場には来ていましたので、延べ人数で言えば2〜3万人になります。補助金の条件に「雇用を増やす」という項目もあるのですが、そういう意味でも貢献はしていたと思います。ただ、現場仕事というのは、志とは別に、とにかく目の前のことを乗り越えていくことに精一杯。そういう真剣勝負の中で、人との出会いもある仕事だと思います。

常松

杭工事、鉄骨工事、屋根・外壁・床の設置、内装工事…。時間がないので、いろいろなことを同時進行で進めなければならない現場でした。コンクリートを敷いている横で鉄骨の壁を貼って、内装の仕上げをしている隣で電気屋さんが配線をいじっている。「食品加工工場」とひと口に言っても、クライアントによって、ニーズによって、進め方はまったく変わりますが、現場監督である私たちは、そこにつねに柔軟に対応していく仕事です。所長である鹿島がよく踏ん張ったと思いますよ。

震災がなければ、発生しなかったプロジェクト。
そこにビジネスとして、人として、どう向き合うか。

鹿島

先ほども話に出ていたように、女川町ではいたるところで復興のための工事をしています。今回の工場新築では、隣地でも防潮堤の工事をしていた。そっちの進行によって、私たちの方がスケジュールを調整する場面もありました。

白石

津波の被害が大きかったことでもわかるように、この場所は海のすぐ側。地中から海水が溢れてきて、作業が遅れることもしばしばありましたよね。

常松

でも、工期内に無事引き渡しができたことはホッとしています。達成感というより安堵感。これはラックランドとしても、大きな経験値になったんじゃないですかね。

吉田

営業としても、本当に安堵しています。ただ、私もまだ達成感というのは感じていないんです。それは復興が道半ばだから、というのは大きい気がします。私たちはビジネスとして物件を手がけるわけですが、復興案件は、震災がなければ発生しなかったプロジェクトです。そこには確実に葛藤がありました。そして、クライアントが本気で命がけになっている中で、ご一緒をする恐怖もあった。

下岡

そういう心の闘いは、復興に携わっているメンバー全員が共有していることだろうと思います。ただ、そこにはきっと意義もあるはずだと思っています。食品工場というのは、そんなに頻繁に、気軽につくるものではありません。コンビニや居酒屋といった店舗の内装とは、やっぱり違う。クライアントが人生をかけた大仕事に携われることは、私にとって意味は大きいです。

常松

ビジネスなのだから利益を追求することは当たり前。けれど、利益だけを追求していけば、妙な建物にしかなりません。一方、クライアントの要望にだけ応えても、予算をオーバーしてしまうし、利益も残らない。折り合いをつけるには工夫が必要なんですよね。

鹿島

バランスは大切ですよね。その均衡を保ちながら、建物が少しずつでき上がっていくのは高揚感があります。建設業に「ツラい、きつい、大変」というイメージを持っている人は多いかもしれないけれど、この喜びはやめられないものがあります。

白石

建設業の話を付け加えると、従来、この業界は年功序列の文化だと思うんだけど、ラックランドは違いますよね。私は転職組で、以前も同じ業界にいたのですが、前の会社では一番の下っ端だった。でも、ラックランドに来て、若くてもどんどん最前線に立たせてもらえています。仕事は趣味や習い事とは違います。どれぐらい社会的に重要なポジションを任せてもらえるかは、生きる上ではとても大事なことだと思います。

吉田

楽な生き方を選ぶか。大変だけれど退屈しない生き方を選ぶか。そこに自分の存在意義があるんでしょうね。「達成感」は個々人がそれぞれに感じるものだから、一概には言えませんが、今回のプロジェクトは特に心を砕いた案件だった気がします。

プロジェクト主要メンバー

※写真左から

  • 設備設計・・・下岡 正拓
  • 施工管理・・・鹿島 純
  • 施工管理・・・白石 哲也
  • 施工管理・・・常松 利得
  • 営  業・・・吉田 琢(撮影時不在)

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